2011年9月30日金曜日

秋の夜はモノラルで

私はこのところモノラル盤のJazzを聴くことに熱中している。古い録音の物は比較的モノラル録音が多いのでその様な傾向になりがちだが、今回はそれとは少し理由が違う。
その最大の理由は、曲を聴いていて非常に心地が良く、疲れない。耳からスーッと身体に音楽が入ってくるのである。この感覚はステレオ盤を聴く時と明らかに違う。

では何でこんなに違うものなのかといろいろ考えてみた。そう、音(楽器)が不必要に動かないのである。
ステレオ録音盤は左右のスピーカーの間を楽器の音が動く。ピアノやヴィブラフォンなどは低音域と高音域の音が左右のスピーカーの間を行ったり来たり。
特に古い時代の盤はモノラル盤からの焼き直しが多いので左右に楽器の音を振って「これこそが最新のステレオ録音というものですよ」的な盤が多いが、80~90年代の盤の中にも、これ見よがしの録音が結構ある。下手をするとそれがその年の最優秀録音盤に選ばれたりしている。

本来、アコースティック楽器にステレオで音が発せられる物などないわけで、その面からみてもモノラル再生は理にかなっているのである。
少し極端かもしれないがオーディオ機器はウェスタン時代にすでに完成されているというのもうなずける。機械式時計の技術がブレゲの時代に完成されてしまっているというのと同じ話だ。

ただここでモノラル盤を再生するにあたり一つ重要なファクターがある。
「1本のスピーカーで再生する」ことである。
モノラル盤をステレオ装置(2本のスピーカー)で再生しても音は確かにセンターに定位するが、これは左右のスピーカー間に出現した仮想スピーカーから音が出ている状態で本来のモノラル再生ではないと私は考えている。
レコードにしてもCDにしても、1本のスピーカーで聴くのと2本のそれで聴くのとでは明らかに音の力、実在感がちがう。是非試してみてもらいたい。

今もモノラルでJazzが静かに流れている。「何もステレオなんかにならなくたって良かったんだよ」と言いたげな音で。

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